「先人に教わった技術と心意気を舞台の裏側でしっかり守ってゆきたい」
現代劇では照明の強さや色を変えて場面を表現するのが一般的です。しかし歌舞伎の舞台は、全体を均等に明るくする“生明かり”が原点。昼間は自然光、夜は蝋燭の明かりを灯して表情を見せてきた古来の方法に則り、照明の強弱で、道具背景に見合う明かりをどう表現していくかが基本、と伝えられています。
舞台のなかには百数十年ぶりの再演、などという演目もあります。現代の照明機器をどう使うべきかなど、当然資料もありません。こういう情景のときにはこんな明かりを灯すもの、と諸先輩から一つひとつ教えていただいた経験を紐解き、ご指導を仰ぎながら、古の舞台に思いを馳せて作り上げてゆくしかないのです。
やり直しのきかない“舞台”の裏側で、我々裏方も一丸となって伝統芸能を後生につなげていくお手伝いができれば。技術はもちろん、先人の皆さまに教わった舞台人の心意気も大切に守っていきたいと考えています。